COMOLI : GUIDI別注 VS バックジップブーツ
こんにちは、TFの鈴木です。
20代前半でこの業界に入り、トレンドになびいたことこそあったものの、大きくはブレずに来たつもりです。
当時から今まで、年齢の上のお客様が多かったこともあり、「無理をしないこと(服)」を求めている方の難しさを、ずっと見せられてきました。
特に、COMOLIの服を見て、選んで、持ち帰っていく人たちの姿を見ると、そのことを強く思います。
“足し算ではなく、引き算。勢いではなく、熟成。”
このブランドが積み重ねてきたものは、お客様にとってみれば“解像度の高い日常”のようなもので、前に出すぎることがなく、お世辞にも説明的とは言えないブランド。だからこそ生まれる“奇跡のようなニュアンス”なんだと思う。
そんなCOMOLIがGUIDIと組む時、表に出てくるのは、いかにもアパレルらしい派手な“協業感”でもなければ、ブランド同士の“掛け算”でもない。
何かに影響されることのない、静かで、もっと個人的な、「長く持っていたい理由」そのもののようなもの。
toff時代。
今から約8年前。
岡本さんがtoffに入社して、ほんの少し経った頃。
まだ僕は、閉店後にビールを手土産に遊びに来るような、迷惑なやつだった頃の話。
そのころにCOMOLI からバケッタレザーのモカシン(イタリア製)が出たことがあった。
今思えば、その片鱗はすでにあったのかもしれない。
そういう意味で、あの頃から少しずつ熟成されてきたのだと思う。
だからこそ“今”なのかもしれない。
TFとして仕入れたのも少しづつ僕らが熟成してきたのかもしれない。
GUIDI の革は、初めて触ると驚く。
“硬さ”と“柔らかさ”が同居していて、どちらにも振り切らない曖昧さがある。
完成した靴を丸ごとタンブラーに入れてオイルを含ませる“タンブラーダイ”という技法によるものかもしれない。
(ただ、このあたりは自分で調べて、噛み砕いていくのがいちばん良い。ここを説明しすぎると魅力が半減してしまう気がする。)
新品なのにすでに使い込まれたようであり、でも確かにまだ何者でもない。
そこには、使い込まれたものにしか出ないような“退廃的な美しさ”がある。
履くたびに沈み、色が浮き沈み、形が少しずつ“自分になる”。
ふとした仕草で、GUIDI の代名詞とも言えるシャフトのドレープが生きてくる。
「これからどう変わっていくか」
その余白を楽しむ靴。
最初から完成している靴より、完成までの余白を残してくれている靴のほうが、大人になるほどしっくりくる日は多い。
なので今は「うおーー、なんか分かんねえけど、なんか凄い」そんな感想でも良いかもしれない。
とはいえ、結局のところ GUIDI は“道具”だと思う。
扱いづらさも、重さも、手入れの手間も、全部ふくめてひとつの道具。
先ほど書いた“日常”の中に、その(COMOLI が描く)“道具感”がすっと入ると、少しだけ生活が整う。
靴が主役ではなく、持ち主の歩き方が主役になる感じ。
時間が経つほど良くなるものを選ぶと、自分の生活のスピードまでちょうど良くなる気がする。
“いま欲しいかどうか”ではなく、“未来の自分が持っていて嬉しいかどうか”。
衝動や刺激で選ぶものより、いつの間にか“自分の一部”になっているようなものを選びたい。そんな年齢になってきた。
派手さより、日常の中でふと良さを思い出せるもの。
ただ、そんな買い物に出会えること自体が、年齢を重ねるほど少なくなっていく。
だからこそ、こういう物に出会うと、生活が少しだけ変わる気がします。
気づけば今日も手を伸ばしている。
理由なんて特別いらなくて、ただ“しっくりくる”から選んでしまう。
COMOLIとGUIDIの間に漂うのは、説明では届かない“らしさ”のようなもの。
強く主張しない(いやしてるのか?)のに、気がづけば日常の景色をそっと整えてくれる。
その静かな確かさが、長く持っていたい理由になる。
それを踏まえた上で一度見ていただけたら。
COMOLI : GUIDI別注 VS バックジップブーツ / ¥242,000-
皆様のご来店を心よりお待ちしております。